■2004年11月27日に行われた川島まちづくり研究会の勉強会レジメです■
まち研勉強会 『NPOについて』
NPOってなんだろう!
発表:吉川明男
[1]ボランティア活動とは
ボランティア活動とは、
『ボランティアの知識とスキルを必要としている個人または地域社会に対し、報酬や利益を期待しないでサービスを提供することである。』
『ボランティアが個人や地域社会と協働することで、その個人や地域社会はボランティアが提供する支援や知識から恩恵を受け、一方、ボランティアもその協同の経験から分かち合い・学ぶという恩恵を受けるのである。』
[2]ボランティアとお金
ボランティアとは「自発的に事業に参加すること。特に社会事業に無報酬で参加する人」
ボランティアは生活(資金面)に余裕のある人・引退者などの時間的余裕のある人・ヒマな人だけがやるものではない。
内容にもよるが参加すること自体に参加者へ資金的負担がかかり、広範囲な市民活動へは発展できない。
●最低限の費用弁償は必要ではないか?
●有償ボランティアと無償ボランティア
[デメリット]
@「心意気」で活動している人に報酬をだすとやる気を無くす
A気分次第で参加するとか、他のメンバーが気に入らないからと簡単に辞めてしまう
[メリット]
@.賃金を支払うことにより組織が拘束力をもち、組織的な活動ができる
Aボランティア参加者に責任感を与え、事業が貫徹できる
●スタッフと賃金
スタッフをやれば自分の仕事が成り立たなくなるわけで、賃金を支払わないと優秀な人材は確保できない
●日本でのボランティアのとらえ方
@手弁当は当たり前。
A能動側(ボランティア)の人には「やってあげている」という気持ちがある。
B受動側の人からの感謝の気持ちが少ない。
●ボランティア大国アメリカの場合
@事業で成功し引退人は社会貢献するのが当たり前
A企業もボランティア活動には寄付をする
Bボランティア活動自体がお祭り的で子供の頃から家族でボランティアに参加しており、意識が根付いている → 教会の存在が大きい
C資金が豊富なため優秀なスタッフ・専門スタッフがいる
※日本でもこのサイクルが出来上がるとボランティア活動が活発になると思われる
[3]「NPO」って何のことだろう
N=Non(非、〜ではない) ノン
P=Profit(営利、利益を目的とした) プロフィット
O=Organization(組織・団体) オーガナイゼーション
訳すと「非営利組織」となる。
「非営利」とは、タダ(無償)で何かをすることではなく、お金を貰っても利益を自分のために使わずに、組織の維持や次回の活動のために使うことをいう。
●NPOとボランティアの違い
@自ら進んで社会のために、非営利で何かをしよう…という目的は同じ
Aしかし、NPOは組織として、ボランティアは活動に取り組む個人という考え方
BNPOはボランティアが力を発揮するのに必要な活動の場を与えることが出来る
C「ボランティア団体・グループ」とNPOの違いとなると、確かにボランティア団体もNPOの一部といえるが、NPOの場合には社会的に責任ある行動を継続的に行うことを強く意識、そのために必要な専属のスタッフがいるということが重要な要素になる。
[4]市民活動と住民運動の違い
「市民」というと市の住民(川越市民だとか東松山市民など)という意味で使われるが、市民活動というときの「市民」は、そういった意味ではない。ここでいう「市民」は、『社会に対して興味や問題意識を持ち、社会のルールを尊重しつつ、個人の自由意志に基づいて発言し、自分にできる範囲で行動する意思を持つ人』といったイメージではないか。
このような市民が中心となって世の中のためになる活動(社会貢献活動)を行っているとき、これを市民活動と呼んでいる。一方、住民運動というと、一定の地域に住んでいる人が自分たちの地域のために行われる活動に対して使われている。
東京に住む人が北海道の湿原を守るため募金活動をしているとして、これは市民活動と言えるが、住民運動とは言えない。大雑把に言えば市民運動は社会のため、住民運動は地域のため、という視点だろう。
[5]法人格ってどういうことか
Ø 例えば、会社のものや会社のお金は社員のものではない。会社が結んだ契約は社員個人の契約とは違う。しかしこの場合、よく考えてみると、人間でもない会社を人格を持った存在として扱っている。つまり、社員とは独立した存在として会社があり、この会社がものやお金を所有し、契約を結んでいるように見えている。
Ø 団体の活動や規模がある程度大きくなると、財産所有や契約などの法律行為を、個人の責任ではなく、団体の責任で処理できるようにしたほうが便利だし、実態にも合っている場合が多くなる。そこで、法律で法人という制度を作り、団体に法律上の人格、つまり法人格を与えることにした。
Ø 法人格とは「法律に基づいて団体に与えられる法律上の人格」ということで、「法人格を取得する」とか「法人になる」という言い方をする。
Ø ただ、もともと人間ではない団体に人格を認めるのであれば、団体の目的や事業、組織や意思決定のルール、団体を代表して誰が業務を行うのか(理事など)などを書類の形に整えておかなければ、一般の人には団体の存在や動きが分からない。
Ø 法律用語では、これらのことを書いた書類を定款と言うが、これは簡単に言えば会則のようなものである。法人はこの会則(定款)に書かれた目的の範囲内においてのみこの世に存在しているということになる。
[6]法人格ってどんな役に立つか
ü 団体が法人格を取得すると、団体の名義で契約を結んだり財産を所有したりできるようになる。人は生まれながらに人格を有しているので、基本的に誰でも契約を結んだり財産を所有したりできるが、団体の場合は、法律の定めに従い一定の手続きを経たものだけに法人格が認められることになっている。例えば、財団法人や社団法人は民法に基づき、社会福祉法人は社会福祉法に基づき作られている。
ü 法人格は持っていないが団体としての活動はしているというとき、これらは一般に任意団体と呼ばれている。任意団体は、実態は団体かもしれないが、法人格がないため、法律上はあくまで個人の集まりとして扱われる。
ü 任意団体は、法人格がないので、団体名で契約したり財産を所有したりすることはできず、これらの行為は代表者などの個人名義で対応せざるを得ない。しかし、万一問題や事故があったときには、代表者などの個人に過大な負担がかかる可能性がある。
ü 法人格を取得すると、団体に関する法律行為を団体名義で処理することができるため、団体メンバーの個人的な負担が軽くなり、また、団体として安定的、継続的な活動も行いやすくなる。
[7]NGOとNPO どこが違うか
NGO(エヌ・ジー・オー)は Non-Governmental Organization という英語の頭文字をとった言葉で、「非政府団体」という名称になる。
主に国際交流、国際協力の分野でよく使われる言葉だが、政府機関が行う国際交流や国際協力に対して、政府ではなく市民の立場で活動している、つまり非政府の団体なんだということを強調して使われている。
団体を見る視点が違うだけで、内容はNPOと同じある。
[8]非営利の意味
「非営利」=「無報酬」ではない
² 『NPOなのに利益や儲けを考えて良いの?』と思っている人も多いと思われる。これは、非営利を無報酬と混同しているところがあるからかもしれない。日本では、ボランティア=無報酬と考えられることが多いため、多くの人々にボランティアの延長線上にあると思われているNPOも必然的に無報酬であろうと思われているようだ。
² 非営利とは、一言で言えば「もうかった利益を団体の構成員に分配しない」という意味。
² NPOは、活動資金として会費や寄付金を集める以外に、活動に対する対価をもらっても差し支えないし、活動資金の足しにするために社会貢献活動とは別に収益事業を行っても構わない。そうやって生じた利益を、団体の構成員で分配すれば営利目的の団体となるが、それを次の社会貢献活動の資金へと回していくなら、営利を目的としない団体、つまりNPOと言えるわけだ。
² NPOは社会貢献活動を組織的、継続的に行うのだから、活動資金を稼ぐことはむしろ当然とも言える。NPOと無料奉仕とは直接は結びつかない。
² なお、何度も言うようだが、スタッフの賃金や事務所運営費などは当然「必要経費」となり、事業活動の「支出」とみなされる。
² NPOで活動することで得た利益を、NPO自体を運営していくことに再投資することで、社会資源や人的資源の育成、社会変革の実現を目指し、そのことによって社会がより良くなっていくことがNPOの目的・ミッションと言える。
[9]特定非営利活動促進法(NPO法)の概要
NPO法人制度は、市民活動等の団体が簡易な手続きで法人格を取得する道を開くための法人格付与制度。
これまで、「法人格の取得」というと、株式会社や有限会社などの営利団体に比較して社団法人や財団法人などの非営利団体の方が、はるかに困難であった。そのため非営利活動を行う団体は、やむを得ず法人格の取得が容易な有限会社等の会社法人として運営するケースや、そのまま任意団体として法人格を取らないで、税務署等への届出もせずに活動する団体が依然として多い。
1990年代はじめから、国民の間で市民活動が活発化していたが、阪神・淡路大震災を契機に市民活動団体が簡単に法人格を取得できる新しい制度の創設の必要性を訴える声が高まった。そして、1998年に議員立法で特定非営利活動促進法が制定され、「特定非営利活動法人(NPO法人)」が誕生することとなった。
NPO法人は、誰でも、しかも資金なしで設立することができる点に最大の特徴がある。資金(資本金)が必要ないだけではなく、申請の際の手数料もなければ、登記手数料(登記印紙代)も必要ない(自分で設立すれば本当にタダできる)。ただし、活動の範囲が特定非営利活動促進法第2条第1項で定める17分野に制限されるほか、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することが求められており、社員の資格制限や情報公開など、公益性重視の観点からの規制が設けられている。
[10]NPO法人の活動分野
@ 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
A 会教育の推進を図る活動
B まちづくりの推進を図る活動
C 文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
D 環境の保全を図る活動
E 災害救援活動
F 地域安全活動
G 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
H 国際協力の活動
I 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
J 子どもの健全育成を図る活動
K 情報化社会の発展を図る活動
L 科学技術の振興を図る活動
M 経済活動の活性化を図る活動
N 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
O 消費者の保護を図る活動
P 上記にあげる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
※Pの役割を担っているNPOのことを特に中間支援組織と呼ぶ。この中間支援組織は、NPO法人、任意団体、ボランティア団体、市民活動の支援を行っている。例えば、まち研がHPスペースを借りている組織がこれにあたる。
[11]NPO法人化のメリットとデメリット
[メリット]
@社会的信用の増加
個人で行動する場合と、NPO法人として行動する場合とでは、相手の対応や受け取り方が異なる。よほどの有名人ならば別だが、通常は法人として行動したほうが相手に安心感を与えることができると思われる。
A団体名による契約や登記が可能
任意団体の場合、団体名では契約も登記もできない。
実例を挙げると・・・
a.団体名で事務所を借りることができない
b.団体名で公共料金(電気・水道・ガス代)を支払うことができない
c.団体名で銀行口座が作れない
d.団体名で電話の契約ができない
e.団体名で自動車の保有ができない
f.団体名で不動産の所有ができない
よって、上で例を挙げているような契約は代表者個人名で行うことになる。何らかの事情で代表者が変わるたびに、その変更をしなければならず、非常に手間がかかる。活動がうまくいっているときは、上で述べているように、すべて個人名義で行っていても特に問題はない(名義変更が面倒)。しかし、この場合、万が一の時に非常に大きな問題を抱えることになる。団体で何らかの問題が発生し、損害賠償や債務不履行(未払い等)などの様々な問題が発生したときは、すべて名義を貸した個人の責任となってしまう。これでは名義を貸した人(代表者など)はリスクが大きすぎ、活動を拡大していくことができなくなる。
しかし、法人格を取得すると、法人として行った活動によって発生した損害は、原則法人が賠償することになる。個人の責任が非常に軽くなるといえる。
また、団体名で銀行口座が作れたり、不動産の所有などができるので、法人名で財産を所有できる。この財産は誰のもの、あの財産はこの人のもの・・・と考えなくて済むようになる。無用な争いを事前に防ぐ一番の対策かも。
さらに、任意団体では上で述べているように「代表者」の名前で銀行口座を持ち、資金の流通を行なうしか方法がないが、法人口座にすることで、資金の引き出しには「理事長印」や「法人銀行印」が必要になるため、これらの印鑑類をきちんと法人が管理すれば、個人が団体の資金を勝手に流用することが不可能となる。多額の預金を預かっている任意団体の代表者にとっては肩の荷が下り、このメリットは非常に喜ばれている。
B組織を永続的に維持できる
任意団体では代表者が管理している財産は、法律上代表者個人のものとなってしまうので、本人の死亡によりその財産は全て民法の規定に沿った処理が行われる。つまり、その任意団体の財産は全て代表者の親族が相続し、本来の持ち主である任意団体に帰属しないので、その任意団体は自然と消滅する危険性が高くなる。しかし、NPO法人であれば代表者は理事長でも、すべての財産は法人に属するため、万一理事や監事が死亡しても他の理事を代表に選任すれば問題がない。「相続」ということが起きないのである。
C経費の認められる範囲が広い
ある程度の規模で活動されている任意団体の場合、税務署に個人事業として税務申告されている場合があるが、任意団体(個人事業)の場合、税務申告をした際に、必要経費が認められないケースがよくある。これは、どこまでが個人のもので、どこまでが事業用(団体用)のものなのかがはっきりとわからないからである。ところがこれをNPO法人にすると、個人の支出とNPO法人としての支出が明確に区分されるため、任意団体(個人事業)では認められない経費が認められることになる。
たとえば、自宅を事務所にすると、一定の条件のもとで住宅費や光熱費は経費で落とすことができる。
また自動車を個人がボランティア事業用として購入した場合、特段の事由がない限り全額経費として認められないが、NPO法人では全額経費として認められる。
D職員採用に有利
職員の採用を考えた場合、任意団体(個人事業主)より法人のほうが有利である。従業員にとっても、法人に勤務するほうが、個人事業所に勤務する場合よりも、勤労意欲が高まり、雇用の安定につながる。よって任意団体より優秀な人材を集めることができる。
E責任の所在が任意団体と比べ明白である
イベントなどで事故や食中毒などが起きると、任意団体の場合、誰が責任を取るのか? ということが問題になるが、NPO法人ならば法人が責任を取るので(法人が責任を取ることは出来ないので、実際は役員が責任を取る)、揉めなくて済む。また、役員の連帯責任という形を取ることも可能なので、任意団体のように代表者一人が責任をすべてかぶるということもないので、気分的にも楽であろう。
F官公署から事業委託・補助金が受けやすい
通常は行政からの事業の委託や補助金は、責任の所在を明確にするために、対象者を法人に限定している。NPO法人という法人格ができたことにより、例外的に任意団体に対し事業を委託・助成してきた行政も、今後は対象を法人に限定するなど、門戸を狭めたり閉ざしはじめてきている。この点については、民間助成団体の助成金についても同様に考えられる。
実際に福祉分野を見てみると、介護保険の事業者指定を受けられるのは法人のみある。法人ならばNPO法人でも会社法人でもよく、どんなに活動実績があってもボランティア団体(任意団体)では事業者指定は受けられない。
G金融機関からの融資も可能
NPO法人制度の認知により、NPO法人向けの金融機関融資も行われはじめている。個人では不可能な資金量を調達できるようになる。もちろん金融機関を納得させるだけの事業計画は必要だが・・・
[デメリット]
@活動内容に制約がある
NPO法人化により、総会又は理事会での合意が必要になり、任意団体の時のように、思いついたらすぐに行動するといった、機敏な活動は一切できなくなる。また、事業内容は定款の制約を受け、事業内容を変更しようとすると定款の変更が必要になる。定款変更のためには、会員の総会を開いて決議をし、さらに所轄庁認証を得る必要がある。すぐに変更できるわけではない。
A厳正な事務処理が必要
経理は、正規の簿記の原則に基づいて処理を行う必要があり、ある程度の知識を持った経理担当者が必要になるか、税理士等に経理を代行してもらう必要がある。また、事業所開設に伴い、法人としての種種の届出、手続きも必要であるし、当然変更するときは何ヵ所にも足を運ぶことになる。このほか、毎年、事業報告書や収支計算書などの資料の備え付けと、その資料の情報公開が義務づけられ、今までは表に出さなかった書類も万人に閲覧されることになる。
B税務申告義務がある
従来、存在すら分からなかった団体が、法人化することによって納税主体として税務署に認知されるで、当然のことながら、法人として税務申告義務が生ずることになる。ただし、収益事業をしない団体は法人税の対象ではないため、税務申告はもちろん、税務署への届出も必要ない。しかし、税務署が税法上の収益事業と判断した非営利事業は、法人税の対象となる。
また、法人住民税(約7万円)はすべての法人にかかってくるが、収益事業をしない団体は免除されることがある。そのためには毎年4月に減免のための手続きをすることが必要である。
C設立に時間がかかる
会社法人と比べて設立するのに時間がかかる。(会社法人は1ヶ月ほどで設立できるが、NPO法人は最低4ヶ月、通常6ヶ月ほどかかる)
D財産の名義変更に関する諸問題
今まで任意団体が所有してきた様々な財産についても、名義を変更しなければならない。例えば、不動産の場合、名義を変えるためにはいくつかの税金がかかる。その他、自動車や事務所、さらに借入金なども、名義を変更する際にはそれぞれ手続きが必要である。
[12]こうしてNPOが生まれた・今なぜNPOなのか
直接のきっかけは、阪神・淡路大震災のときに、ボランティア団体やNPOの救援活動、復興支援活動が一定の成果をあげたことが高く評価され、マスコミや出版を通じて広く伝えられことによると思われる。
従来、公益、つまり世の中の不特定多数のもののための利益は、行政が担う分野と認識されてきた。しかし行政の原則は平等、公平である。要するにみんな同じに扱わなければならない。
ところが、現代は人々の価値観やニーズは多様化し、社会問題も多種多様となっている。こうなると、平等、公平の原則に配慮し、法令に基づいて動かなければならない行政では、迅速できめの細かい対応が難しい。
例えば、災害などの緊急を要する事態、時代の先を見据えた先進的な試み、規模は小さいけれども見過ごせない社会問題などです。
一方、行政に比べて小回りがきき機動性に勝る民間非営利団体の活動は、個別の活動だけを見れば範囲は限られているかも知れないが、全体として見れば、行政の対応が難しい分野をカバーしつつ、行政とともに公益を担っていく可能性を持っていると言える。
今までは、社会は行政と企業によって支えられていると考えられていた。つまり、行政は公益の分野を、企業は利益追求の分野を担っていた。しかし民間非営利部門がこの二つの勢力と並ぶ第三の勢力として成長し、行政と並んで公益を担う力を持つようになれば、市民主体の社会の実現に大きく役立つことであろう。この第三者の勢力の担い手として、NPOに期待が集まっているわけある。
福祉・環境・国際協力・まちづくりetc…、今、すぐに、何とかしなくてはという課題に取り組む自発的な市民活動が活発になってきている。活動理念や目的に賛同・共鳴する人たちが、公平さや利潤にとらわれない、きめ細かなサービスの提供を目指すNPOが、今日的課題を解決していくうえで、今まさに必要とされている。
[13]これからの市民社会
近年、世界規模での環境問題の出現や官僚主導による行政の行きづまりなどから、国家や国益の意義が相対的に薄れてきて、市民の役割が重要視されてきている。
これからは、社会の構成員が公的課題に取り組むための責任を自覚して、公益促進のために積極的に参加できるような「市民社会」を築いていくことが望まれている。
[14]参加型社会におけるNPOの役割
組織中心で、一元的価値観を持ち、集権的であったこれまでの社会から、「個」を基調とし、多元的価値観を持ち、分権的な参加型社会に向けて、部門間の新たな役割分担を創造するために、コーディネーターとして機能していく。
《行政・企業・NPOの特性比較》
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行 政 |
企 業 |
NPO |
組織理念 |
社会的合意 |
最大利益 |
価値の実現 |
行動原理 |
法令(手続き) |
競争(市場) |
共感(ネットワーク) |
行動特性 |
公平性・画一性 |
能率性・機動性 |
自発性・互助性 |
受益範囲 |
全体的 |
選択的 |
部分的 |
[15]まとめとして
我々がNPO活動を実践していく上での基本的な考え方
会社の場合、利益の追求が一番に優先されるが、NPO法人の場合は「社会的使命」の実現が優先される。
もちろんNPO法人といえども活動していく為には経費がかかるので、利益を求めることはするが、企業のように対価を前提としたものではなく、対価よりも社会的使命が優先されなければならない。社会的使命を無視して営利だけを追求したら、「非営利」とは言えなくなってしまうので。
簡単に言うと、『儲かるか儲からないか』ということではなく、例えば、『環境保護に全力を尽くす』とか『高齢者のケアをきちんとやりたい』というような『社会的使命』を営利よりも優先させて活動する組織がNPO法人なのである。